鍋釜、家具など以外の本来保守点検契約でメーカーなどが安全管理責任を負っていましたが、リチウム電池を多用した製品など、リスクの高い製品が多く一般消費者市場で販売されています。トラクターでもオークションで販売されています。このため、国も法律解釈を変え、規制強化を進めています。製品の安全に関する多くの情報は「表示」「取扱説明書」が担っています。

作業機械も電動化で簡単に使えるようになり、自転車も含め事故が多発、パソコンやプリンターなども業務用とは言えなくなりました。産業用機械器具も一度一般市場にて販売され保守点検契約のできないものは労働安全として決められてきた表示や取扱説明書の大幅な規定の見直しが必要です。


「取扱説明書の簡易検証」をご利用する前に下記の「取扱説明書の目的と機能」をご一読いただき、取扱説明書の改善にお役立てください。

※当協議会発行の取扱説明書ガイドラインより抜粋し、記載しております。

取扱説明書の目的と機能

正しい使い方をわかりやすく伝える

取扱説明書は英語では「USER MANUAL」「 OWNER’S MANUAL」「OPERATING MANUAL」などとなっており、総じて「マニュアル」ということになります。
このマニュアルという言葉は人が手で動かすという意味の言葉です。「手引書」という意味合いもあります。しかしながら、取扱説明書は設計意図などを含んだ重要な文書で、製造業者と使用者をつなぐものですから、単なる手引書というものとは異なるものと考えるべきであるというのが、私たちPL研究学会の考え方です。つまりは、製品は、製品本体に加え、取扱説明書(設計意図、使用 方法、警告表示などを記述した一綴りの文書)を含んだものとしてひとつの完成された製品ということができるということです。
丁寧に、大切に、末長く使っていただくのが日本の「物づくり」の原点だということからすれば、取扱説明書には製品を供給する事業者側の心意気をも入れることも大切だと思います。
従って、取扱説明書の作成にあたっては、片手間に行うのではなく、まさに日本の「おもてなし」精神につながることとして読んでいただく工夫を十分に凝らしたいものです。
今ではインターネットとモバイルなどの急な普及で、以前とは比較にならないほど、文字を読む力(識字能力)は高くなってきているといえます。そのため、取扱説明書をわかりやすく作る、それをインターネットにより、いつでも実際の使用者が情報として入手できるようにすることが、誤使用などによる事故防止、クレームなどの低減に大きく寄与することとなります。
当然なことですが、使用方法が一般の使用者には難しいような製品の場合、また従来にはない新しい製品の場合などについては、使用についての正しい手順や使い方などを理解できるように伝えなくてはなりません。また、使い方をよく理解できないと期待した効果が得られない場合や、手順を間違えると事故になる可能性がある場合などには「してはいけない事項」(禁止事項)としてその旨をわかりやすく伝えなくてはなりません。
このような使用者に正しく伝えなければならない重要な事項は、本来なら取扱説明書に記述するだけではなく、使用者の年齢、経験や使用環境などを配慮した上で販売の現場で口頭においても説明することが求められますが、販売現場での担当者の製品知識も不十分なこともあるので、取扱説明書の記述が重要となってきます。
また、現在では単に紙に印刷されたもののみではなく、PDFなどのコンテンツとしてインターネットなどにより利用されるものも重要なものと認識すべきでしょう。

ガイドライン基本要項

(1) 書式仕上がり寸法はA4判左綴じとすること
(2) 使用者が一度で読み切れる24ページ以内に収めること
(3) 家庭でも印刷できるデータで作成すること
(4) 印刷物だけでなく安全情報として使用者がいつでも必要なときに閲覧できること。
(5) 文字の背景は白地、使用する文字・イラスト色は黒とすること
(6) 本文に使用する文字サイズは10ポイント以上、書体はゴシック体とすること
(7) 誰もが見やすい上下送り順のレイアウトとすること
(8) 使用者(購入者とは限らない)に正しい使用方法やリスクなどを伝えること
(9) 取扱説明書として必要なすべての項目を正しい順序で表示すること
(10)一般家庭用製品のリスクの洗い出し項目は、2ページ以内を目指すこと
(11)お手入れ(メンテナンス)方法などを記載すること
(12)寿命表示(設計寿命、期待寿命など)を記述すること
(13)保証規定がある場合、その内容を記載すること
(14)使用中にトラブルが生じた場合の責任主体を明確にすること
(15)仕様や責任主体など消費者に伝える必要のある情報を表示すること
(16)本体表示については取扱説明書との整合を取ること
(17)ガイドラインの視認性(書体、文字サイズ、背景色など)を順守すること

機能性

①使用者に正しい使用方法やリスクなどを伝える。

製品によるトラブル予防の観点から、実際の使用者に伝わるように取扱説明書を記述しなくてはなりません。製品を使用するのは、その製品の購入者であることが多いと思いますが、家電製品や風呂釜などの家庭用製品の場合はご家族や賃借人の方も使用するはずです。例えば、ガス風呂釜の不完全燃焼でアパートの賃借人が死亡した事案では、設置事業者の設置上の過失を認めつつ、使用者(賃借人)に対する禁止事項を含む強い警告をすべきであったと判示しています。
また乳幼児・子ども用品などは、お母さん、赤ちゃんや子どもが実際の使用者になります。カプセルに入った玩具(ガチャガチャという名称で子ども でも使える専用の自販機にて販売)の容器カプセルを誤飲し、3歳未満の幼児が窒息した事案では7歳児以上の年齢に幼児を対象としていた製品であっても、3歳未満の幼児がこのカプセルで遊ぶことは特異なことではないとし、製造業者にPL法上の責任を認めています。
さらに購入者と第三者間での貸し借りや譲渡もあるでしょうし、近年では他人に販売される再利用される事業(リサイクル事業)も活発に行われており、不特定な方に転売されることもありえることになります。
このように取扱説明書は、読む対象者を特定できない製品の使用方法を説明するツール(マニュアル)という特殊性を持ち、事業者として使用者に正しい使い方を伝えるための書類です。従って使用者に、製品の正しい使用方法を伝え、トラブルを未然に防止するためには、「想定できるすべてのリスクの洗い出し」を行うことが大変重要になります。その上で、特に「してはいけない禁止行為」に関しては、誰もが理解できるようにして、事故を回避するための表示を明確に行うことが重要です。

②取扱説明書として必要なすべての項目を正しい順序で表示する。

取扱説明書は面白い著作物とはいいにくく、一般の使用者にとってはできれば読みたくない文書だといえるでしょう。そのため、必要事項を秩序立てた順で説明することで、読み手(使用者)は流れに沿って読むことで、正しい使用方法を理解できるようにしたいものです。
手順の記載抜けなどを防止し、取扱説明書に求められる必要事項の記載順序は以下の通りとしています。

【取扱説明書に求められる必要項目の記載順序】
1. 表紙
2. 重要事項説明
3. 製品(商品)説明
4. リスクの洗い出しによる禁止行為の表記
5. 使用方法
6. お手入れ(定期点検などがある場合はそのことも記載)・保管方法
7. トラブルシューティング
8. 製品寿命
9. 保証規定
10. 仕様(試験方法・条件など)
11. 責任主体など

③一般家庭用製品のリスクの洗い出しによる禁止行為の表記は2ページ以内にまとめる。

取扱説明書の最も重要な目的は、誤使用による製品トラブルの予防だと言って過言ではないと思います。その目的達成のために大切なことがこの「リスクの洗い出しによる禁止行為の表示」で、使用者に対し製品トラブルの回避方法をより理解しやすく説明することが必要です。
そのためには事前に予測されるトラブルを考えぬき、これを伝え、内容を精査し、使用者が正しく判断できるように明確な文章で示し、使用前に正しく理解してもらわなければなりません。内容が多岐にわたれば、当然に訴求力を失い目的を達成できませんので、簡潔な文案作成も検討したいものです。
このガイドラインでは、家電製品や風呂釜、暖房機など比較的製品トラブルの多い製品でもこの項目の記述は最大でも見開き2ページまでとしています。つまり、それ以上に及ぶ場合は設計上の見直しの必要があるのではないかとの危惧を持つということとなるかと思います。これについては、社内で十分ご検討いただきたいと考えています。なお、石油、ガソリン、ガスなど、そもそも重大な危険性を有したものを使用する場合は、法律に定めるところの表示・表記 を行う必要がありますが、説明などについては、わかりやすい言葉、文書にて示すことが重要なことはいうまでもありません。
製品使用前に使用者に対し予測されるリスクを伝え、製品トラブルを回避するために必要な手段を知らせる項目で、リスクコミュニケーション手法を研究しなければなりません。
誤使用などに重点を置き、予測される原因などを複数の視点で十分に検証し、過剰反応を排除し、必要最低限の項目に整理し、さらに混在文書をなくし、危険度合い(リスクの高さ)に応じた「危険」「警告」「注意」に区分けし表示します(取扱説明書ガイドライン、コラム5をご参照ください)。
さらに適切な箇所にイラストや図を配置し、使用者に対し製品事故の回避方法をよりわかりやすく説明することが必要です。
リスクがあることを過剰に伝えようとすると、不要なページ数増加により印刷コストの増加につながりますし、また、かえって読む側に重要なことが伝わりにくくなります。特に家庭用品などにおいて、「危険」が多数記述されている事例や、リスクのさほど感じられない生活雑貨に「警告」が記述されている場合などは、その内容について十分に吟味されていないことと思います。これについては「第4章 危険の洗い出し手順と表記」に詳しく解説しています。

(出典:一般社団法人PL対策推進協議会 取扱説明書ガイドラインより)