製品安全社会の実現
目次
超スマート社会でのPL対策
一般的に製品の品質については、所定の品質基準(規定)に基づき販売後の購入者への責任を果たすことになっています。例えば保証書などに書いてあることです。これは所定の期間、無料で修理や交換を行うこと、災害などの場合は補償しないなどの規定を示していて、狭義の取り組みです。その後通常に使用していても欠陥が原因で事故になると被害者に対して様々な損害の賠償責任が生じます。このことの事業者の責任を明確に定めた法律がPL法です。また、消費者安全については、消費者基本法に定められた事業者の責務、消費者の権利を正しく理解し、製品の安全に関する情報を伝えることが求められます。
最新のPL対策とはこの考え方を根底において、広義の製品の品質保証での作る側、使う側は、作る側の情報を正しく理解し、生涯、製品事故予防に努め、万一事故に遭遇しても泣き寝入りをしない賢い消費者により、製品事故を無くし製品安全社会の醸成に取り組むための方法です。
広義の品質保証
安全装置などを利用し、製品の品質を高め且つ安全性を確保すること、さらに安全性の問題が生じた場合には、直ちに自主回収や製品リコールによる事故の未然防止を目的とします。また、事故が起きた場合は再発防止、被害の拡大防止を図ることまで組み入れることになります。
広義のPL対策
消費者安全という視点で製品を見たときに、例えば誤使用(使用者のミス)などを防ぐための取扱説明書や本体表示を基盤に、安全に使用するための情報、リコールや自主回収にもその情報を迅速に伝えるリスクコミュニケーションの取り組みなどがこの分野です。万一事故になった際の被害者救済のためのPL保険を軸にした取り組みもこの分野になります。
製品安全社会の醸成
には、上記のように安全な製品を市場に提供することと消費者が事故などに至らないようにする取り組みが不可欠です。万一不具合により事故に至ることが予測されたら、事業者は直ちに消費者に使用の中止を伝え、回収したり廃棄を促し、事故の未然防止を図らなければなりません。そのためには、リコールや自主回収までのプロセス、そのことを迅速に確実に実行できる体制やシステムを準備することになります。Society5.0(超スマート社会)での製品安全も、ICT/IoTを利用したスマート化が求められています(経済産業省)。
品質保証とPL対策
狭義の品質保証
- 購入者に対し保証規定内の品質保証
- 多くは免責を主張する規定
狭義のPL対策
- 被害者が自ら企業に賠償を求める
- 法律家に依存する
- 国介入は解決が長引く
- 裁判官の過去の判例に委ねるので新しい事案は難しい
事故未然防止と再発、被害拡大を防ぐこと
具体的な広義のPL対策
取扱説明書や本体表示のPDCA
- 設計や製造上で解決できることをユーザーに責任転嫁しない
- 必要な事だけを簡潔に一目でわかるように伝える(モバイル対応)
- 製品の使用者がいつでも見える場所にダイレクトに対応製品の取説をリンクさせる(QRなどで)
- 現状のトリセツポータルサイトはB2B用である
- 特別な技術的知識が無い消費者にわかる内容、表示方法にする
- いつでも多言語対応できる説明文や固有名詞にする
- web上での機械翻訳については誤翻訳リスクの責任が問われる
- リコールで消費者に確認させる表示内容は常に製品の表側に記載する
- 表示は場所や使用環境を考慮し視認性を重視すること
リスクコミュニケーション
3年以上使用するもの、中古やオークションで再販される可能性のある製品は特に5年〜10年以上、所有者や実際に使用している方との連絡手段が必要。
- 個人情報、個人特定情報については特に規制・罰則強化が進む
- 日本は電話番号依存が根付いているがスマホ社会では電話やメールアドレスもアクセスできなくなる可能性が高い
- 製品特定情報(製造者、型式、ロットや個体識別番号などは消費者がすぐに確認できる場所や環境条件を考慮し設計に組み込む)
- 特に国外にて使われる場合を考えグローバル的な対応が必要
- モバイルではパソコンのように全角・半角・記号などの制限されたテキスト情報入力は大きな負担になり、個人情報登録を諦めることが多い
- SNSでの告知は効果を期待できない(この種の情報は炎上しない)
広義のPL対策取り纏め
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- 誤使用対策として取扱説明書や本体表示の多言語とモバイル対応
- webサイトでは重大事故と安全に直接関わらない自主回収やリコールを混在させない(重大事故になるものは全てのトップ画面に表示)
- 実際の所有者、使用者とのリスクコミュニケーションの確立
- 自社のweb、国や民間のリコールデータベースの効果は懐疑的
- 記者会見、報道、新聞社告では、消費者が手元の商品との整合が確認できない(短い報道での情報では内容を覚えていない)
- 小売などの協力に依存しない
メーカーの不祥事である製品の不具合対応を流通小売に依存する事自体が大きな過ちであることを認識する。
小売事業者の最も大きな資産の顧客情報を利用させることには懐疑的に考えるのが通常
リスクコミュニケーションの確立
Society5.0での製品安全
- 製品安全のスマート化は機械のIoT/ICT化を進めてもリコールが効果的に行なわれないと企業も消費者も大きな損失になる
- 電気製品でも多くの場合、ICT実装できない(圧倒的にこの種の製品の方が多い)
- 電池化の影響で製品寿命が短くなっている一方でLEDなどのように10年も使えると購入時期もわからない(経年劣化事故に繋がり易い)など
リスクコミュニケーションがこの先の繁栄を支える
- 異常や不具合情報の取得(発見)
- 製品の適正な寿命がきたら確実に伝える
- 迅速なリコール告知で使用中止を伝える
- 流通段階での不良品の発見方法の確立
- 異常をリアルタイムに通知する手段の確保
- 各プロセスのデータ解析によるリアルタイムの状況監視と対応
賢い経営が求められています
- 出荷した後のアフターマーケットまで裾野を広げた顧客情報管理が必要
- 過去のロットをいつでも確認できる品質管理のシステム化
- ICT/IoTではグローバルでのユニークコードが重要
POINTB2B2Cの安全情報共有が鍵
PLPとは
PL対策には下記の2種類があります。
- PL事故 予防策(PLP:Product Liability Prevention)
- PL事故 発生後対策(PLD:Product Liability Defence)
PLP(PL事故予防)とは、文字通り「PL事故の発生を予防する」という対策です。
事業者側
(1)「実使用」を考慮した安全設計
・使用環境、使用目的を明確にしたデザイン、設計
(2)設計図規格通りの製造
・設計者の指示に基づいた製造
(3)「使用方法」の限定
・本体表示や説明書などにより、設計者、製造者にしかわからない設計上、製造上の技術的視点により、誤使用を防止するための表示や説明(表記)
使用者側
(1)ブランドやお店を過信しない。
(2)説明書に記載された「正しい使用方法」を理解する。
(3)異常を感じた時の判断を誤らないこと。
・・・などの方法があります。
特に、使用者側(2)について、使用者側が「事故やトラブルを予防する観点」から「表示」をよく確認し、正しい使用方法(実使用、メンテナンス、製品寿命など)を把握し、正しい使用方法を遵守すれば、事故はかなり予防することができます。
PLDとは
PL事故の被害は、通常「被害者」と「加害側企業」の双方に発生します。さらに事故発生後、取るべき初期対応が取れないまま時間を経過させてしまうと、新たな事故が発生したり、被害者の損害が拡大するなどの恐れがあります。
そのため、まずPLDには下記要件が求められます。
- 被害に遭われた方の「安全」を確保すること
- 新たな事故の続発を防ぐこと
- 被害者を救済すること
- 早期解決を行い、被害拡大の防止を行なうこと
このとき、大切なのは「被害=企業の損害」と考えない姿勢です。
どんなに注意しても、事故は10万分の1の確率で発生します。
起こってしまった事故を悔やんだり、お互いの責任を追求しあっても、一度発生してしまった被害は元には戻りません。それどころか、混乱により企業内の機能が麻痺し、次の策が打てないまま時間を経過させたために、新たな事故が発生し、被害(損害)が拡大することすらあります。このようなことにならないよう、日頃から「もし、PL事故が発生したら」というシミュレーションを行い、事故前に対策を立てておくことが大切です。
JTDNAでは、「PL法対策」とは違う「IT社会に即した最新のPL対策」について、様々な視点から研究し、毎年「最新!PL対策導入ガイド」を公表しています。また、その解説について「最新!PL対策解説書」にまとめ発刊しています。ぜひご一読ください。
>>「最新!PL対策導入ガイド」はこちら
もし、「事故が発生した」という連絡が入ったら・・・
- 社内緊急時マニュアル等に則り、以下の事故情報を集め、担当者への連絡と情報共有を開始します。
・損害の把握(人身、物損害の別)
・被害の現状(今、どうなっているのか?)
・製品名、型番等 - 事故製品の取扱説明書、販路・仕入れ経路を示す書類などを即座に準備します。
※初期対応の善し悪しで、以後の拡大損害を防止できるかどうかが決まります。 - 保険代理店に相談し、事故発生後の手順を確認し、適切な対応を取ってください。
ご注意
PL保険には自動車保険のような「示談交渉サービス」はありません。弁護士法などにより第三者の介入が出来ないためです。(当事者か法律上の代理人(弁護士・司法書士など)しか交渉の代理人にはなれません。)
※損害が支払われない場合もあります。(特に拡張担保特約等のない契約、損害請求ベース特約の付いた団体契約など)
ポイント
- 事故を受け付けたら即座に契約担当の保険代理店に事故報告を行い、その後の指示を受けること。
- 口頭処理は一切せず、必ず書面化しておくこと。
- 日頃から、正しい事故受付の方法、初期対応、その後の対応について、PL保険契約代理店から指導を受けておくことが大切です。